ナナメから見るリアルな美大の日常
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ハンセン病に学ぶ
時にはおかたい文章を。
一年のとき取っていた授業でとてもためになった授業があります。
『日本国憲法』の授業です。
むさびにきて憲法について勉強する機会があるとは思わなかったな。
それも教職の必須科目だったから受けたのですが、思いのほかおもしろく、課題レポートは本気でやりました。
どうしてそんなことを今更思い出したのかというと、
むさびに行く電車の吊り広告で、ハンセン病についての展覧会のおしらせの広告を見たからです。
ハンセン病は日本国憲法で私がとりあげたレポートテーマでした。
ハンセン病は私の両親の世代の人だったらご存知でしょうか??
私ははずかしながらまったく知りませんでした。
あ、もののけ姫のタタラで、全身包帯の人たちが出てきましたね。武器を開発していた。
あれは、ハンセン病患者たちです。
ハンセン病とは、感染病のことで、
重度の場合の症状が、見た目に恐ろしくなってしまうことから差別の対象となってきました。
感染力は極めて低いにも関わらず、恐ろしい病であるかのように扱われ続けていたのです。
(偏見を避けるために記述しますが、現在は、ハンセン病は適切な治療をすれば治癒可能な病気なのです)
日本では『療養所』というハンセン病患者の共同生活の施設を作り、なかば強制的に患者を入所させていました。
療養所で骨をうずめた患者の方々。そのことを思うと思わず胸がギュッとしめつけられます。
患者の方々は人権侵害を訴え、これは長い間国と療養所患者の方々とが争い、結果、患者側の勝利で結末を迎えました。
↓はレポート作成の際に、判例に関して理性的にのべている本を探していたときに見つけた良質な本です。
ハンセン病国賠訴訟判決―熊本地裁「第一次~第四次」 | |
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判例の内容について書くと、高度な政治問題になってしまうので、深く触れるのはやめます。
ハンセン病の差別問題から教訓にしなければいけないのは
人を表面上のことで判断してはいけない
ということなのではないでしょうか。
日本には残念ながら、病気というその人の人格とはなんの関わりのないものを理由にし、国家をあげて差別してしまった、悲しい歴史がある。
人は本来優しく、慈しみ深い存在であるけれど、
差別や偏見の対象、『共通の敵』とでもいったらいいのでしょうか。そのような少数派に対し、どこまでも冷徹になれる一面を持っていると思います。
表面上のことを気にすることの恐ろしさ、そんなことを感じます。
国家の集合的感情を左右するのは、それをまとめる存在である、いわゆる重役たちなんだろうけど、
そんな人たちが、表面上の事柄から判断した少数派を差別したら、
いっきに社会がそれに見習う危険性がある。
美大にいると(一般大でもそうかもしれないけど)
どうも表面的な美しさばかりを追ってしまう気がしてならないのです。
オシャレだったり、オシャレなもの作る人がそれこそわんさかいる。
見かけの美しさ、楽しさ、心地よさ、たしかに美術ってそういうものを描いたり、演出したり、作ったり。
美術は、人をハッピーにするすばらしいものだとは思う。
でも、真に使う人、見る人のことを考えるためには、
表面より深いところを見る目が備わっていないとできないように思う。
むりやり芸術におきかえて話をすれば、ものづくりでも
表面上のことをおいかけることにはどこか危険性を感じずにはいられない。
えげつないいじめが厳然と存在する小中高で学んで来て、
そんな中を勝ち抜いてきた、時に加害者だったりする・・・そんな勝者の大卒出の人たちが中心となって画家になったりデザイナーになったりしてたりする。
うーん話がとびすぎじゃない?
とも思うけど、いじめをしてた、黙認してた人たちが、大学に入ってコロッと変わって、
そうして大企業へと勤めていくことにどこかいっつも違和感を感じてた。
もののけ姫でハンセン病を誠実に捉えて表現してる、宮崎さん。
社会的な勝者にも関わらず、どこか深いところをみつめ続けている。
まだハンセン病への差別が根強く残っていた時代に、
短大の保母育成科で療養所について学び、正確な認識を持っていた母。
私は二人に優しさ、では片付けきれない、本質を見ぬく目を感じる。
人に優しく、平等に とか言うけど、そういう当たり前な思いやりが、美術の深いところで本当に大切なんだと思う。
オシャレな格好やオシャレなことをしてることだけが、美術に大切ではないんじゃないだろうか。
真に人の胸をうつ芸術は、単純な優しさから生まれるのではないかと思います。
私は眠かったらだらだらしてるし、不誠実な態度もとってしまう。
表面より深いところをしっかり見る目がはたして私に備わっているのだろうか?
親友が言った。『勉強は金持ちの道楽』
大学で学ぶからには
深いところを見つめる目を身につけたい、そう思います。
飼育係さんの真摯な言葉がここのこの心にも響きました。
>差別や偏見の対象、『共通の敵』とでもいったらいいのでしょうか。そのような少数派に対し、どこまでも冷徹になれる一面を持っていると思います。
残念ながらそのような対象を人為的に作ることによって人々を分断し一部の人たちのみ権益を得られるような社会構造が作られてしまっているのが古今東西いろいろなところで起こっている問題の起因でもあります。日本にもあった身分制度、世界中の植民地政策などにも見受けられますね。
人間の弱いところ「自分よりもっとみじめな人たちがいることによって安心してしまうかも」という弱い心に負けないようここのこも心がけねばと思っています。
>短大の保母育成科で療養所について学び、正確な認識を持っていた母。
すばらしいお母さまだと思います。
飼育係さん、もしお時間が取れれば下記のデザイン展のぞいてみてください。
「世界を変えるデザイン展」
http://exhibition.bop-design.com/#/outline/
投稿者 ここのこ : 2010年06月07日 11:26