南の島からお届けする、武蔵野美術大学通信生ブログ。2010年3月、芸術文化学科・文化支援コースを卒業しました。
« ムサビ通信を振り返る | メイン | 最後に »
Search
世界でいちばん好きな場所
あるショッピングサイトの月末までに使わなければならないポイントがあり、
特に欲しいものもなかったので、雑誌を数冊買いました。
その中の1冊。
少し前の、雑誌「Pen」で、
特集は、「世界でいちばん好きな場所」。
Pen ( ペン ) 2010年 2/15号 [雑誌] | |
おすすめ平均 世界を旅する時間が無いのなら Amazonで詳しく見る by G-Tools |
雑誌の表紙は、ナスカ平原を貫く、パンアメリカンハイウェイ。
女優の永作博美さんの挙げた場所です。
でも、私にとっては、いちばんの場所ではない。
それぞれの人が持つ思いやバックグラウンドで、
感動する土地や風景は違うのだと思います。
では、自分にとっての、「世界でいちばん好きな場所」ってどこだろうなぁ、
って、この数日考えていました。
よく聞かれる、「今まで旅行した中で、どこが一番良かったですか?」
という質問の答えも難しい。
あえて、1ヶ所を挙げるならここかな。
南米チリのパタゴニアにあるマグダレーナ島。
首都から約3千km、ビーグル海峡に面したチリ最南端の都市プンタ・アレーナスから、
さらに船で3時間。
しかも1年のうち3ヶ月間、週3回だけ(海況の良い時)船が出る。
という、なかなか行き難い島なのです。
こんな穏やかな日は本当に珍しい。
普段人の住んでいない島には、指定された小道にだけ、
人間が立ち入ることが許されます。
ペンギンは小道の存在なんて知らないから、どんどん入って来る。
ええっと、ペンギンが邪魔で歩けません(笑)。
もちろんペンギン優先です。
ペンギンから何メートルか以内に近寄ってはいけない、
というルールがあるので、人間はひたすら通り過ぎるのを待つ。
人間が住んでいる場所の近くに生息しているペンギンは臆病です。
人里から離れた場所にいるペンギンほど、人を怖がらない。(南極とか)
この島で繁殖するペンギンは、ラブラブ♪
たった1時間しか上陸を許されない島だから、
貴重さが増すのかもしれません。
南極の生息地のように、特別な取材カメラマンしか行けない場所ではない。
でも、ここに行くには時間とラッキーさも必要。
という、私にとっては、すれすれ感のあるペンギンの生息地。
世界中の野生ペンギンが見られる場所の中で、
(もちろん全部に行ったわけではないけれど)
この島が、私にとっては特別な場所です。
本当に、世界中に大切な場所や、素敵な場所があります。
あの遺跡、
あの海中、
あの美術館、
あのカフェ、
あの街角。
でも私にとって、いちばん好きな場所は、
今住んでいるピーナッツ島です。
ピーナッツ島があるから、私は世界中をうろうろして、
またこの場所に戻って来ることが出来るのです。
私は二十歳の時に、「一生旅して暮したい」 と思いました。
関西生まれの私が、ピーナッツ島に住んでいること自体、旅の途中にいるような気もします。
そして同時に、私は「港」でありたいとも思っています。
この島で海に関する仕事をしていますが、
毎年、数校のクラブやサークルの学生が卒業していきます。
就職して、結婚して、子供が出来て、
同期生同士や、個人や、家族で、また戻って顔を見せてくれます。
学生時代にいくつかの夏を過ごしたこの島が、
人生の中のちょっと安らげる寄港地であればいいなと思います。
仕事を辞めて、ゆっくりしたくて、
10年ぶりにのんびりしたピーナッツ島を思い出した方に、
「ああ、まだここがあって良かった」 と言われました。
1週間前には、「やぁ、久しぶり」 って20年ぶりにやって来た人がいました。
わたしたちは、いつもここにいるよ
私は、「夢を食べて生きていける」
と信じて大人になってしまいました。
そして、今も信じています。
もちろん、夢に向かう方法論はあるにしても。
夢は手を伸ばし続ければ、届くような気がします。
少なくとも、手を伸ばし続ける価値はあると思います。
今年卒業するみんなに、カンパーレ!