2009年10月25日
落ちたレポート 2
[コンテンツデザイン 第1課題 Webサイトとユーザビリティ]
- 日本美術サイトにおける「Webユーザビリティ」の分析 -
1. Webサイトにおけるユーザビリティの定義および解釈
一般の人々がインターネット、いわゆるWebサイトにアクセスし始めたのは1995年頃と記憶する。そのころは、基本的にテキストベースで若干のビットマップがある程度、Yahoo!のようなポータルサイトにおいてもアサヒコムのようなマスコミのサイトにおいても画像はほとんど掲載されていなかった。通販サイトの草分けであるAmazonにしても書籍販売のみで、商品画像は掲載されていなかった。
その後、Webサイトのデザインはよりrichになり、イラストが多用され静止画も当たり前になり、ここ2年くらいで動画も当然のこととなった。インフラも整備され、インターネットにアクセスするユーザーが増えるごとに通信能力も強化され、それを支えるコンピューターテクノロジーもより強力なものとなった。このような状況の中で「Webサイトにおけるユーザビリティ」、ここではユーザーがより速く的確に情報にアクセスすることができることと定義すると、ユーザビリティが向上したのかという問いにはyesとも答えられるしnoと言うこともできる。
例として新聞社のサイトを取り上げてみる。開始当初はカテゴリとして政治、経済、国際、社会、スポーツの各ニュースが掲載されていて、アクセスする人も明確に今日のニュースが知りたい、あるいは為替の情報が欲しい、またスポーツの結果が知りたいとしてそのような情報にアクセスしていた。しかし現在のサイトを見ると、コラムもあれば住まいの情報やキャリア情報、様々な広告などがあり、目移りしてそもそも何のためにアクセスしたのか忘れてしまいそうな情報量と言える。またそのような情報の中から、自分自身が必要性に気がついていなかった情報を見つけることもある。つまり、スーパーマーケットで買い物をしているようなもので、そこに物があって初めて必要性に気がつく、というものに変化して行った。
ここで、いくつかの参考書を読んでみた(文末の「参考書一覧」を参照)。全ての書籍において共通して主張されるいるものを以下に列挙する。
・サイトの目的を明確にすること
・ターゲットユーザを設定すること
・サイトを訪れる利用者の視点でデザインすること
・そのために、利用者の行動を分析・理解すること
自らの体験、および参考書での学習を踏まえてユーザビリティの優れたWebサイトを分析する。
2. ユーザビリティの優れたWebサイトの分析
ユーザビリティの優れたWebサイトは、
・その人の知りたい情報が速く的確に得られること
・および、その人にとって本当に必要な情報を気づかせてくれる
ものと考えて、優れたサイトを選んでみる。ここでは自分自身が卒論のテーマとしている「日本美術」のサイトを閲覧し分析する。
日本美術サイトにアクセスする人は、基本的に日本美術に興味を持っている人と考えられる。その目的は趣味であったり学校の勉強であったり、中には仕事で調べる人もいるであろう。一口に日本美術を紹介するサイトと言っても、教育用画像素材を提供するもの、美術館や博物館が所蔵品を紹介するもの、重要無形文化財や国宝といった国の制度に沿って美術品を紹介するものなどがある。
その中で、美術品を網羅的に紹介する「文化遺産オンライン」(http://bunka.nii.ac.jp/Index.do)のサイトが優れていると考える。時代、分野、地域からの検索が可能で、また国宝や重要文化財といった制度からも美術品を探すことができ、名称・作者・所蔵館といった条件から検索することも出来る。これらの検索によって、美術品の画像、制作年代、説明、関連するリンク情報を得ることができる。
その他には、重要無形文化財の動画による紹介、ユネスコの世界遺産といった切り口からの日本美術の紹介、全国の美術館・博物館情報が、トップページからアクセスすることが出来る。
また、他のサイトに見られない特徴として、テーマで眺める文化遺産「遊歩館」というページがある。「空間」「うつろい」「人」などの言葉から一つを選択し、例えば「空間」という言葉を選択するとそこからさらに「山のある」「桃源郷を求めて」などの選択肢があらわれその一つを選択すると美術品の画像があらわれる。言葉を選びながらどのような美術品が紹介されるのか、わくわくした感じを抱かせるサイトである。
「文化遺産オンライン」サイトの構造図を以下に示す。
[トップページ]
|
+ 時代検索
+ 分野検索
+ 地域検索
+ 文化財体系からの検索
+ 条件検索
+ 動画による無形文化財の紹介
+ 世界遺産の紹介
+ 全国の美術館・博物館情報
+ 遊歩館へのリンク
3. 考察
Webユーザビリティの優れたサイトは一般的に、サイトの階層が浅いこと、自分がどの階層でブラウジングしているのか把握しやすいこと、またトップページにすぐ戻れること、と考える。このことによって情報が探しやすくなる。これはコンピューターソフトウェアについても同じことが言える。
設計者の立場から言うと、階層を深くすることによって情報を分類することが容易になるが、深くしすぎるとユーザビリティを損ねる。階層が浅い場合、一つの階層に表示される情報は多量になりこれもユーザビリティを損ねる結果となるが、これは情報のレイアウトを工夫することや検索機能を援用するとによって解決可能と考える。世の中の趨勢は階層を浅くする方向に向かっているようだ。
4. ユーザビリティ・ポリシーの提案
以上の分析・考察からユーザビリティの優れたサイトを制作するためには、
・階層を浅くすること
・階層ごとの情報量が多くなる時には、レイアウトを工夫し、また検索機能を利用すること
・ユーザーが求めている情報を的確に表示することは勿論のこと、ユーザーの嗜好や感覚によって思いもかけない情報を提示することができること
を提案する。
5. 学習の感想
仕事でWebサイトにアクセするようになったのは1994年くらいのことであろうか、その時開発していたソフトウェアにインターネットアクセスの機能を持たせようと考えていたこともあって、技術、ユーザインターフェイス、コンテンツといった側面から考えを巡らせていたが、そのようなこともあってネットの使用頻度は非常に高かった。
2000年前後にはネットバブルの影響もあって、インターネットのビジネス化について真剣に考える機会があった。この時はコンサルタントを多数使ってずいぶん分析をしたものだが、ビジネスとしてはその後大きな成果を得られることができなかった。
当時を振り返ってみて、あくまでも供給者側の論理で物事を分析・考察していたと気づく。早く成果をあげなければというあせりもあった。
今あらためてWebサイトについて考察を行ったが、優れたサイトはユーザーからの視点、ユーザーにとっての使いやすさに配慮し、デザインについても操作性についても特に奇を衒ったことをしていない。ごくごく当たり前のことであるが、制作者側に立つと素直にそうすることが難しいものである、ということもあらためて認識した。
- 参考書一覧
『ユーザ中心ウェブサイト戦略ー仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践』 武井由起子, 遠藤直紀著 ソフトバンククリエイティブ 2006
『Webユーザビリティ・デザインーWeb制作者が身につけておくべき新・100の法則。』 石田優子, アルファサラボ著 インプレスジャパン 2007
『入門Webデザインユーザビリティ 使いやすさで成果を上げるプロのワザ』 池谷義紀 ソフトバンククリエイティブ 2008
『新ウェブ・ユーザビリティ』 ヤコブ・ニールセン, ホア・ロレンジャー共著 斉藤栄一郎訳 エムディエヌコーポレーション 2006
『ウェブ・ユーザビリティルールブックー顧客を増やすサイト設計』 ビービット著 篠原稔和監修 インプレスジャパン 2001
添削を担当したのは丸田という教師だったが、内容云々よりは前提条件がどうのこうのと書いてあったな。その通りに修正して再提出したら、また同じようなことをコピペして送り返してきた。
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