2007年10月07日

神隠し

井上靖の自伝的小説『しろばんば』を読んでいたら神隠しの話が出てきて、小学校の同級生が行方不明になってから3日後に森の中で見つかって、それを見に行こうと近所の友達とかたらって行ってみたはいいものの、自分自身が杉林の中に迷い込んでしまう。ミイラ取りがミイラになったわけで、これは大正初年の伊豆の山村の話、読んでいて秋のこの季節にふさわしいと思ったものの、小説の中で事件は初夏に起こっている。


自分の父親は長野の篠ノ井線沿線の村の出で、神かくしの話を聞いたことがあるけれど戦前の話で、狐に化かされるとも言っていた、行方不明になった村の中年男が数日後、暁暗に電柱の回りを独り言をいいながらぐるぐる回っているところを発見されたという話を今も覚えている。


小学校にあがるか上がらない頃、父親の田舎に遊びに行ったとき、夏の夜、田の畦道を歩いていると向こうの丘に狐火が見えた、と言いたいとこだけど僕には見えなくて、だいぶ年上の兄ともっと年上のいとこは狐火が見えると言うけれど、僕にはよく分からないのだった。日本から暗闇がなくなった今にして思えば、狐火を見る最後のチャンスではなかったかと思う。

Posted by phonon at 2007年10月07日 23:30
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