2006年08月18日

和辻哲郎『古寺巡礼』

岩波文庫の『古寺巡礼』をはじめて手に取ったのはずいぶんと前になるけれど、その後なんどかこの本を読み返した。類書がいくつも出ていて、亀井勝一郎、町田甲一、竹山道雄、その他にもあったと思うけれど、和辻の本を超えたものはないように思う。


土門拳の『古寺巡礼』は写真集だから和辻の類書と思っていないし、土門の本から和辻のものを連想したりはしない。
小学館文庫版の土門の写真集を見ていたら、エッセイに子供の頃は横浜に住んでいたことが書いてあって、自宅近くの小学校に通っていたことが分かり驚いた。無骨そうな土門と、スマートな浜っ子の間につながりを見出すことができない。


和辻の本に話を戻せば、改版序には若い頃の旅行日記と断りがあり、確かにみずみずしい筆致で大学院生くらいの頃に書かれたものとずっと思いこんでいたけれど、年譜で確かめてみるともうすぐ30歳になろうとするときに書かれたものだった。その年までぶらぶらしていられたことに軽い嫉妬を感じるし、それゆえ広い知識を持ちつつも若々しい感性で書くことができたのだなと思う。

Posted by phonon at 2006年08月18日 21:13
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