2006年04月05日
『映像文化論』の教科書
美術館に行くと、奥さんに無理矢理連れてこられたようなおじさんがいて鑑賞のじゃまになるのだけれど、作品の前に仁王立ちになって「絵っていうのは分からないなァ…」とわざわざ付け加えるのを忘れない。このおじさんが詩や音楽だったら分かるのかというと、そうとも思えない。
そもそも分かる必要があるのかという問題はとりあえず置いておいて、このおじさんの分からない気持ちというものが、映像文化論の教科書の次の記述を読んで腑に落ちた。「ただ、学校で習わない事柄というのは、何かにつけ”分かったようで分からない”的な満たされない気分がついてまわるものなのである」(平木収『映像文化論』武蔵野美術大学出版局)。
絵って言うのは分からないとわざわざつぶやくのは、できれば分かりたいという気持ちと裏腹であると解釈すれば、「分からなくたっていいじゃない」という無責任なことは言えないのである。
Posted by phonon at 2006年04月05日 22:12
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