何事もうまくいくとは限らない

最近、祖母の洗脳に成功している気がします。
と、いうのも、私が美大にいる理由のいちばんは彼女による部分が多く、それがよかったのか悪かったかは今のところ判断ができないのですが、彼女はどうやら、一般的な美大のイメージに近いところを想像していて、「美大生です」と言うと「あら、絵がお上手なのね」と返してくるような人です。
高校生の時、もう我が家には美大に行くしかない、という雰囲気が流れており、なんとか反発したかった私はめちゃくちゃに勉強をして、いわゆる一般大に進学する気で満々でした。
今は芸文にいて、よかったな、ということが多いので、これといって後悔することはないのですが、一般大のためにこっそり勉強した時期がものすごく充実していたな、ということはちょっと香ばしい思い出であります。
つい先日、受験生に出会うことがあり、受験の話に花を咲かせることになるのですが、どうやら私の勉強の仕方はおかしかった、ということに気がつきました。
現役の彼女達の話を聞いていると、なんともスマートな勉強をしているではありませんか。私としては、「おいおい、そんなんで本当に覚えてんのかよー?当日になって、勉強したのにド忘れしちゃってぇ〜なんて言い訳するんじゃないの?」と意地の悪いことを思ってしまったのですが、脳みその容量が違うのでしょうか。

当の私の勉強方法は教科書をまるまる読むというもの。
日本史だったら、日本史の教科書を1ページ目から、索引の前のページの「。」までしっかりと。
My Favorite テキストなるものがあり、各教科1冊、ないし2冊を1日でまるごと読み込むのです。
いちばんいいのは音読なのですが、さすがに電車の中で音読をしては車掌さんに通報されてしまいますので、餌をねだる鯉程度に口をパクパクと。そんなことをしていると、面白い出来事とリンクして記憶されます。
私の中で、日本史の朝鮮総督府についてのページは、富士山を登山した人のイメージとリンクしています。新富士の駅から乗車した富士山を登山しましたであろうファッションに身を包んだおばちゃんの集団が、新幹線の真ん中の席にそれぞれ座っている映像がふつふつと湧くのです。

この話を彼女達にすると、そんな時間がない、との返事。うーん、そりゃMステみてたら当たり前だわな。

祖母の兄弟の奥さんに、息子が大学に入るために大好きなお茶断ちをしたと聞いたことがあります。その人の息子さんは結局、当時の旧帝大に合格し、見事祈願が叶ったのですが、それと同じで私も野球中継断ちをしました。今からでも遅くない、神頼みだ!


美大を目指す人はまわりから「いいの?大丈夫なの?」と聞かれることが多いと思います。
私も、中学1年生の時の個人面談で進路のことを尋ねられると「美大に行くことになると思います」となんとも生意気な物言いをしたら、その後にあった父兄面談で「お嬢さんは美大に行くといっていますが、ご家庭では了解済みなのですか?」と確認されたと母が言っていました。
我が家は、美大に行けモードだったので、問題なかったのですが、私のやりたい仕事を祖母に理解させるのが大変でした。
実は美大に行くことをあまり快く思われていないんだ、という自覚のある方、今からまわりを洗脳しましょう。
美術館に連れて行っても効果がありません。もっと身近な美大出身のすごい人について語るのがいちばん。あんまりすごすぎてもいけませんよ。リアリティがありませんから。私は、佐藤可士和さんをネタに祖母を洗脳しました。「あれを作ったのがこの人なの〜」という言葉が聞けたら、もう2押し。最後の1押しは保険です。「一時の熱にほだされているのではないか?」と思われぬよう、週1ペースでちょっとしたネタを盛り込みます。くれぐれも本来の目的を明かしてはいけません。「美大出身の人はすごいだろ!」というようなことを言っては相手の神経を逆撫でしかねません。化粧品のパッケージや、食料品など、なるべく相手がわかりやすいものでアピールするのがよいと思われます。私は広告で攻めたので、『広告批評』や宣伝会議で出版されているような本を読みあさり、どんな人がどのCMを作っているかを調べて、お茶菓子にする、食卓の話題も盛り上がるという、本来の目的とは違った利点も生まれたり、生まれなかったり。身内に対してなので、本当かどうかはわかりませんが、プレゼン能力もつくような気がします。


日曜日の朝、必ずきくラジオ番組があるのですが、その出演者が同じ時間帯のテレビ番組に出ていて、再放送(・・・いいとも増刊号)とはそういうものなんだな、と考え深い出来事でした。この出演者というのは、とあるテレビ局のアナウンサーなのですが、仕事中、お客様に喋り方が似ていると言われてから、ものすごく意識をしています。「何をおっしゃる、お母さん(受験生相手の商売なので)」と思っていたのですが、言われてみたら、接続詞の選び方が似ているのかな、と思うのですが、相手はことばのプロですからね。多分、彼がやっている番組のシュチュエーションと、私がお客様に接する感覚が似ているのかもしれません。ちょっと私は納得いかないのですが。


今日は私がいかに切羽詰まっているかをお話するつもりだったのですが、結局は私の気持ちの悪い勉強方法と洗脳のやり方についてだけで終わってしまいました。うまくいかないものですな。

投稿者:okutomo : 2008年11月30日 23:28

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