September 04, 2007
「どんだけ〜」考
私の知らぬうちに、いつの間にか若者のあいだで一般化した言語。
「どんだけ〜」
私がこの言葉を耳にするようになった時には、もう彼らの世界では常識だったようだ。
実におもしろい現象だ。
若者に限られた共通認識を、外側から検証できる年齢になったわけである。
さて、そんなわけで、この言葉がどのような場面で、
どういうニュアンスで使用されるのかを、電車の中で高校生の会話を聞いたり、
若者のブログを読んだり、ドラマの中で使われているのを注意して観察したりした。
その結果、現時点で「どんだけ〜」には2通りの使い方があることを確認した。
仮に名付けるならば、「量的どんだけ〜」と「質的どんだけ〜」である。
前者は、初心者でも比較的抵抗なく理解し、使用することができる。
【例文1】
A:「今日も熊谷の最高気温40度になるらしいよー」
B:「どんだけ〜」
こういった場合、「いったいどれだけ40度が続くのか」という文の、
「どれだけ」の部分を抽出して、短縮使用している。
驚きの感情を込めた表現である、「どんだけ○○なんだ!」という言い回しと同じだ。
程度が著しい場合の表現として、量的どんだけ〜は、大人社会でも容易に使える。
【応用1】
A:「また農林水産大臣が代わるんだって。」
B:「どんだけ〜」
説明するまでもなく、「どんだけ代わるんだ!」の意味である。そう違和感はない。
それに対し、質的どんだけ〜の方は少々難解だ。
簡単に他の言葉に置き換えられないのである。
【例文2】
A:「もしもし今どこ? 集合場所吉祥寺ってメールしたけど、国分寺だった超ごめーん!」
B:「どんだけ〜!」
このどんだけ〜を、どのように言い換えれば良いのだろうか。
「どーゆーこと? アタシだけ吉祥寺に来ちゃったじゃん。勘弁してよね〜 サイアクー」
という感情だろうが、無理やり文章にしても「どんだけ〜」という言葉との関連が見いだせない。
そもそも、瞬時に頭の中にこんな長文のような盛りだくさんの内容が浮かぶとも思えない。
それよりも、「えええええっ??」とか「ふへぇ〜(脱力感)」などの感嘆符の方が近いだろう。
言葉にならないその場の感情を、「どんだけ〜」の一語で表現しているわけである。
若者は、質的どんだけ〜を使用するタイミングが的確かつ絶妙だ。大人には難しい。
【応用2】
A:「あのセレブきどってる奥さん、最近お料理教室を開いたけど、あれ実は宗教勧誘らしいわよ」
B:「どんだけ〜!」
苦しい。実に不自然である。
我々世代より上の人間が質的どんだけ〜を使いこなすには鍛錬が必要だろう。
若者は、新しい感覚に新しい言語を生み出し、すぐに対応できる。
それは、年を重ねるにつれて衰えていく能力かもしれない。
私も、適応ができていなかったというか、発生にしばらく気づかなかったわけで、
やはり衰えが始まっているのだろう。
だが、たとえ適応能力が低下の一途をたどったとしても、
新たな言葉を頭ごなしに否定するのではなく、まずじっくり観察し検証していけたら、
とても楽しいのではないかと思う。今回みたいに。
この「どんだけ〜」における説について、
ご意見・ご感想・また別の見解も、お待ちしております。
okina_maro@hotmail.com
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