リアルな美大法人企画室長の日常を
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久しぶりに日記を書いてもらおう19
ムサビ日記OBにリアルな現況を書いてもらう「久しぶりに日記を書いてもらおう」シリーズ。
卒業後、一体彼らは何をしてるのか。
ゴールデンウイークは終わりましたが、もう少し続きます。
これまでの日記を「書いてもらおう」はこちら。
■2007年
・久しぶりに日記を書いてもらおう1 -小春さん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう2 -とーぼーさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう3 -珍念くん編-
■2008年
・久しぶりに日記を書いてもらおう4 -とーぼーさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう5 -小春さん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう6 -ひだまりさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう7 -珍念くん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう8 -tankさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう9 -una-pinaさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう10 -MoMongaさん編-
■2009年
・久しぶりに日記を書いてもらおう11 -とーぼーさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう12 -日当り良好くん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう13 -ひだまりさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう14 -小春さん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう15 -凡々さん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう16 -珍念くん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう17 -una-pinaさん編-
・久しぶりに日記を書いてもらおう18 -ELKくん編-
いよいよ今日はニアさんです。
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ニアです、お久しぶりです。
GW企画に呼んでいただき、ありがとうございました。
しばらくブログを書いていなかったので、乱筆乱文をお許しください。
今回は、ちと長文で「仕事編」と「プライベート」の2つに分けてお伝えしたいと思います。
「仕事編〜一つの商品を世に送り出すまでの出来事〜」
視デ卒業後、大企業メーカーに就職、デザイン部に配属された。
主に制作するものは、パッケージデザイン、雑誌や新聞広告、ノベルティグッズ、営業用販促物など。
配属された当初、先輩の仕事を見ながらデザインのハウツーを学んでいくのかと思いきや。。。
翌年度の会社の重要商品のデザイナーを担当させられる、ことに。
最初の一ヶ月弱は課長がついていてくれた。
そして途中から一人になった。
すべての意思決定とデザイン作業に追われることになった。
それから一般発売までの半年間、パッケージ内の表示の問題、開封の仕方や商品写真の打ち合わせ、販促用ポスターやノベルティグッズの提案など、デザインがだんだんと固まっていく段階ごとにやってくる新しい人々の出会いの中で、まったくの「素人」がそれぞれのプロと対等にやり合わないといけない状況が続く。
会社代表のデザイナーとしての責任感が常に重くついて回った。
新入社員、大学時代遊び程度でMacを触っていたレベルで、社長に一喝され調査に行かされたり、ターゲットのお店に行ったり。
商品デザインなんて、完成まで大凡100は出してはぽしゃった。
カメラマンとの意思疎通の難しさ、印刷所で色が出ずに泊まりになったり、商品企画の担当と深夜までやり合ったり。。。
商品に中身が充填され、出来上がったら、CM制作の現場へ立ち会う。
中身を2秒少々見せるカットでも半日以上が過ぎた。
ようやく皆様にお披露目の「記者会見」。
新聞や雑誌が取り上げてもらうように話題性を狙うコピーを考えパンフレットを制作する。
そうして商品がスーパーに置かれる。私の半年が詰まった我が子たちが立ち並ぶ。
この何気なく存在している一つの商品には、私のその時々の「最大限の決定」が詰まっている。
生みの苦しみを散々味わった後が、この世界の厳しいところ。
売れるかどうか、という勝負の土俵に立つ。
新商品の8割は売れずに淘汰され一瞬で消えてしまう日本の市場で、どれだけ消費者の人が身近に感じられるか。そして手に取ってもらえるか。
デザイナーはこの一点にすべてを尽くす。
会社としてはこれから売っていきたい商品なだけに、挑戦的なアイディアも出すことができ、何度も試行錯誤し、勉強させてもらったいい体験だった。
今回のプロジェクトは、私の中では「情熱大陸」的なストーリーだった。
現在は、香港の子会社のデザインリニューアルを図るために海外出張を通し、現地の社長と大きなブランディングのプロジェクトを考えています。
これも、仕事の仕方がわからない。
いつも新しいことばかりで苦しいです。
「プライベート編」
不思議なことに
日々10以上の案件を同時に進め、アイディアをひねり出す瞬発力を求められる仕事をしていると、
自分の中の「規則性」を徹底的にやりたくなる。
私が続けている規則性とは「ジムで決まったメニューをやること」だ。
会社が終わった後、急ぎ足でジムに行く。そしてワークアウトを通して体調と心の安定を図ることができる。週に2、3回は通っている。
入社当時、バブル時代を謳歌した女性社員が言った
「20代30代でちゃんとお金を使わないと、40代以降枯れるよ」
というドスンと重いブロー。以降、私はほぼ色んな消費を楽しむようにしている。
冷めきった消費の時代に生まれた私の世代は、大凡貯金だとか、節約だとか、草食系だとかのキーワードが大好きだけども、先が見えない今こそ、楽しいことに使わずして何を思う!?
というわけで、
休日は、おおよそエンターテンイメントに尽きる。
数週間前はコルテオ(サーカス)を見に行って感動した。(日当りさんもいくんだ!)
他にコンサート、映画、展示、何よりも「美味しいもの」を貪欲に探し当て、食べにいっている。
そんな私です。
お呼びいただき、手羽さんありがとうございます。
では、また。
ニア
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自分でいうのもなんだけど、このシリーズ、本当に美大生の就職観や仕事事情(シュウカツ事情じゃなくて)を知るいい企画ですね。これだけで本にできそう(笑)
下手な進路説明会よりも全然いい気がする。
数年前に某美大を卒業、大手玩具メーカーに就職し、1年目で発表した某プロダクトがかなり話題になった人がいるんだけど、それで天狗になっちゃったのか、もともとそういう性格だったのか、仕事での人への対応がすごく悪かったそうなんですよ。
うちの奥さんは違う会社でそっち系の部署ではないんだけど、営業さん経由でその人の悪口が入ってくるぐらい、「業界での評価」が最低ランクになってるそう。
で、今はどうしてるかっていうと・・・かわいそうだけど、その人は完全に業界全体から干されています。
どんな立派な企画を考えた人であっても・・・そういう世界なんです。
旧態依然な日本企業社会が原因かもしれませんが。
結局仕事とは「人と人との関係」なわけで。
「飲みニケーションが大事」って意味じゃなくて、相手を思いやる気持ちが仕事では必ず必要になってきます。
だって、自分ひとりで全部はできないし、大きな仕事になればなるほどそうなってきます。
原稿を見る限り、ニアさんはそういうところも全部わかってるようで、安心してます。
うん。この子はやる子だと思ってましたよ(お母さん気分)
さて、「久しぶりに書いてもらおう」は明日がラストです!
お楽しみに!
今年3月までムサコムをやっていたannwnです。ニアさんの日記には始めた当初から毎回感心させられていました。
今回の日記も今年4月に社会人になったばかりのボクにとって参考になることばかりです。
>新商品の8割は売れずに淘汰され一瞬で消えてしまう日本の市場
痛いほど共感しました。一時期「何でもかんでも新しいものをエネルギッシュに作ろう!」という風潮が学生のみならず、ビジネスの世界でもありましたが、冷静に考えればおかしな話です。それで消費者に商品が売れればこれほど楽なことはありませんからね。
実際には新しいものの売り上げはゆるやかで、しかもニッチな戦略で一定数のシェアを稼がなければあっという間につぶされるか、商品の投入機会をうかがっていた後発組にやぶれてしまいます。プラズマテレビの先駆者だったパイオニアがソニーや松下に抜かれてしまったように。そういう現場の修羅場を入社した直後に体験できたニアさんのこの文章からは学ぶべきところが沢山あるように思えました。
ボクはまだぺいぺいの研修中の映像関連の人間ですが、テレビ離れが進んでいるなか、本当に先が見えません。ただ、ユーチューブやインターネットが爆発的に普及して、一定の豊かさが手に入った今日、「なんか自分達が求めていた生活や社会とは違うな」という風向きを少しずつ身の回りからですが、感じ始めています。ようやく社会のシステムに疑問を感じる土壌が整いはじめたというかなんというか。アマチュアの暴論がまかり通っていた世界でようやく本当のプロを求め始めたとも見えます。
そのなかでこれから厳しいことが自分にも多々あることがはっきりしていますが、短期の流行や情報に流されないようにしながら手堅く多くの先輩のノウハウを学びながら攻めていきたいと思います。
後半はちょっと変な文章になりました。すみません。長々失礼しました。
投稿者 annwn : 2009年05月11日 22:02