リアルな美大法人企画室長の日常を
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なぜ東京に行くのか?-1
以前、地方の進学相談会で「なんで東京の美大を受験しないの?」と生徒さんに聞いたところ、
「だって、東京は危なそうだから」
と返ってきたことがありました。
「東京は危ないから親が許してくれない」と。
ある地方大学の大学案内には「東京に比べて安心して暮らせます」と対東京的に書いてるところもあります。
この3月頭の時期だと、地元と(無理だと言われた)東京の大学に合格したんだけど、親御さんから「東京は危ないから地元にしなさい!」と怒られた(怒られてる)人もいるかもしれません。
東京の美大を受験しない理由が「東京の美大に魅力がない」「家計が厳しい」だったら、「そうかあ・・確かにこの県には○○芸大っていう立派な大学さんがあるからね。わざわざ東京に行く必要はないか。」「私立美大は学費が高いし、1人暮らしだとアパート代もかかるしね・・」とも思うし、無理矢理薦めることはありません。
でも、上京しない理由が「東京は危なそうだから」ぐらいだったら、ちょっと考え直して欲しいんです。
「東京は危ない」と思ってる受験生の皆さん。そして親御さん。
ぜひ「都道府県別 犯罪率」等のキーワードで検索してみてください。
東京の犯罪率って意外と高くない。
「件数」だと1位の場合が多いけど、そりゃ人口が多いんだもん。当然。
でも、「犯罪率」「人口●人当たりの犯罪件数」で見ると、東京が1位ってことはほとんどないのね。
日本全体で見た場合は「犯罪率は低い」とはとても言えないポジションだけど(笑)、大都市圏の中では意外と低い方なんです。
むしろ、あなたの親御さんが薦めてる地方都市や「歴史のある町だし、イメージ的にのんびりして平和そう」と思ってるところが犯罪率的には東京より高かったり、同じぐらいだったりするわけで。
犯罪にも、凶悪犯罪・児童犯罪や住宅侵入などいろいろあり、調べれば分類ごとの犯罪率も出てきますが、そっちも同様の結果が出てきます。
もちろんデータの見方にはいろいろあるので、「だから東京は安全なんです」とは言いきれません。違う観点からみれば「やっぱり東京は危ない」という結論も出るでしょう。
でも、「とにかく東京は危ないんだってば!」と言い切るのは難しいんです。
テレビのキー局やマスコミのメイン発信場所が東京だから、東京の話題が扱われやすい(扱いやすい)のも「東京は危ない」と思われてる原因のひとつでしょうね。
地方では扱われないような記事も、関東で起きると日本中に配信されることが多い。
裏を返せば、「東京で活動した方が、地方で同じことをやるよりも、なんだかんだ日本中(世界中)で注目されやすい」ということでもあるのだけど。
地方のニュースだと大事件か、もしくはニュースの時間調整で「○○県では雑煮会が行われ、みんなで舌鼓を打ちました」な「田舎は平和だよー」的なニュースしか全国には流れない。
それがいいことなのか悪いことなのかはここでは書きませんが、世の中ってそんなもんなんです。
人やものが集まってくるのが東京であり、日本の情報を発信しているのは、良くも悪くも、なんだかんだで東京なんだよね。
と理屈で理解してても、東京ってやっぱり怖い(笑)
私も「東京は怖い」というイメージをもって上京してきました。
でも実際になにか怖いことがあったかというと、うーん、15年以上東京に住んでるけどありません。
ムサビに来たことがある人なら、東京中が渋谷繁華街みたいな場所じゃないことはわかってますよね?(笑)
怖いところに行けばそりゃ怖いことが起きるんでしょうけど、それはどこも同じで。
パリに行った時に「日本人はあそこのブロックに行っちゃダメ」と現地に長く住む日本人に教わったことがありましたが、だからといって「パリは危ないから住んじゃダメ」なんて思わないわけで、それは東京も同じ。
地方というものにも偏見があるけど、「東京」というものにも偏見があります。
感受性の高い時期・・つまり10代後半から20代前半に東京で過ごすのは、作家やデザイナーを目指す人にとって必要な時間だと思うのね。
それで東京の空気が合わなかったら地方に戻ればいいわけで、「東京は危ないから」という理由で最初から東京行きをあきらめるのは、かなりもったいないよ。
続く。
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もちろん、いつものごとく自腹企画です。
以上、手持ち本がなかったからamazonで買ったら、「2〜4週間以内に発送します」になっちゃって、この入試直後の売れそうな時期に逆効果になってるような気がしてる手羽がお送りいたしました。