研修「MUSA」 -手羽編3−

「研修MUSA」のおさらいです。

■問題:
あなたはムサビの木炭デッサン試験会場に不時着しました。数分後に実技試験を受けなくてはいけません。周りを見渡すといくつかの道具が落ちていました。木炭デッサンを描くために使えそうなものを順位付けしなさい。

●鉛筆4本
●食パン一斤
●15cm定規
●1m四方の段ボール
●タオル
●ガムテープ
●消しゴム
●携帯用バーナー(キャンプとかで使うやつ)
●インターネットが使える電子辞書
●5000円札


1位5000円札2位鉛筆(場合によっては3位に携帯用バーナー)ときて、次は何か。

手羽ならどうするか?



描くものは確保できたんだから、次に必要なのはもちろん「消すもの」。消具。
「消すもの」で優先順位が高いのはやっぱり「食パン」ですね。
次に「タオル」。逆に消具として一番いらないのは「ケシゴム」。
あ、食パンで腹ペコな受験生を釣るっていうのはダメですよ(笑)


順番に説明すると。


ひっかけでもなんでもなく、食パンは木炭デッサンで普通に使用する消具です。
この情報化の進んだ現代でも普通に使っています。食パンの白い部分をちぎって、こねて、ネリケシのようにして使うのです。

これ、美大生でも知らない人が多いんですよ。
誰かがブログに「ドラマを見てたら、デッサンの絵に食パン1斤をグリグリ押し付けながら描いてるシーンがあった」と書いてたけど、美術スタッフに美大卒者が何人もいたはずなのに「食パンを消具として使うことは知ってたけど、どう使うかは知らなかった」といういい例です。

入試の時、画材屋の前に「食パンあります」と張り紙が出るんですが、何も知らない職員が「バターも塗ってなくて焼かれてない食パンじゃ誰も買わないでしょうに。だからムサビって不親切なんだよ。受験生のためならアンパンとかヤキソバパンを用意してあげりゃいいのに」と文句を言ってたことがありました(実話)
受験生のために食パンなんです。アンパンじゃダメなの(笑)


食パンが木炭デッサンに必要不可欠な道具だとは誰も最初は想像できないでしょうね。
自分も研究所でこの事実を知った時はショックでしたもん。食品を道具にするという抵抗感。パンも「自分は食べられるために生まれてきたのに、ヘタクソなヘルメスを消すために使われるなんて・・」と泣いているかもしれません。でも、無駄使いをしてるわけじゃないんだけどね。

安物の食パン(または時間がたったもの)はカサカサして使いにくい。高級な食パンは柔らかいから使いやすいんだけど、バターが多いとベトベトしちゃう。ずっとやってると「自分はこの会社のこのパンと相性がいい」ってのがわかってきます。
ちなみに私は山崎パンの160円ぐらいのが一番使いやすかった。130円のやつだと柔らかさが足りなくて、190円ぐらいのだとベタベタしちゃって合わなかったんです。

美術研究所のアトリエに入ると、必ずといっていいほどトースターがあります。
それはカサカサになってしまった余った食パン、もしくはデッサンでは使わないパンの耳を焼いて食べるためにあるんです。今明かされるトースターの謎(笑)


ちなみに「デッサン用に使うパンを『消しパン』と呼んでたから、それと区別するために食用のパンを『食パン』と呼ぶようになった」というのは都市伝説です。


次に「タオル」。
木炭デッサンでの消具必需品は「食パンのネリケシ」と「ガーゼ」です。
ガーゼを使ってぼかしたり、大きな面を消したりします。
だからガーゼがない場合は、その代用として「タオル」が必要なんだけど、「最悪」ってシーンであれば、代用がきかない食パンの優先順位が上がります。ガーゼやタオルの代わりはシャツとか靴下がありますからね。

「ケシゴム」で木炭を消すことができません。
ま、「何も描かないよりは木炭デッサンなのに鉛筆で全部書く」場合には必要になるだろうから、ないよりはあった方がいいかもしれないけど。
それとチョンチョンと消すためなら木炭デッサンでも使えるかもしれない。
ま、木炭デッサンではそんなレベルの道具です。
「ケシゴム」ではなく「ネリケシ」だったら優先順位は上がります。


つづく。

投稿者:ichiro : 2007年12月08日 04:00

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