リアルな美大法人企画室長の日常を
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ユニバーサルデザイン
*時間のない方は「ここからが本題です」から読んでください。
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ユニバーサルデザインとは「誰もが公平に使用できる製品や施設をデザインしよう」という考え方です。
これは私の解釈ですが、バリアフリーとの大きな違いは「さりげなさ」だと思ってます。
「わざわざ高齢者や障がい者のために●●をしましたよ」的なことはせず、「日常生活でみんな普通に使えるもの」「ジャマにならないバリアフリー」がユニバーサルデザインじゃないかと。
「特別に作らない。ジャマにならない」ってことはそれを基本として製造すればいいので、バリアフリーよりコストを抑えやすい。コストを抑えることができれば普及も早い。
「本当に誰もが平等に使えるもの」は恐らく作ることはできません。目が不自由な方と耳が不自由な方が必要とする道具は違うわけで、「これはユニバーサルデザインだ」「いや違う!」と論争が起きる最大の原因がこれ。なので、私はユニバーサルデザインとは「どのくらいカバーできるのか?」よりも「いかにさりげないか?」「社会に溶けこむか?」がポイントなんじゃないかと思うようにしてるんです。
例えば、電柱を地下に埋めて誰もが歩きやすい歩道を作るのもユニバーサルデザインです(ただ、すごくお金がかかるので私のいう「ユニバーサルデザイン」にはならないかもしれないけど)。
また、以前紹介したムサビで展覧会が行われているアイソタイプも「言葉や年齢・教育程度に左右されず、誰にでも容易にコミュニケーションができる表現手法」のために作られたものですから、まさにユニバーサルデザイン。
電卓や電話の真ん中のボタンについてる突起も、パソコンキーボードのFキー、Jキーの突起もそう考えることができます。お札も触ることによってどれが1000円札なのかわかるようになってますね。
500ミリリットル以上の牛乳パックの上面。注ぎ口とは反対のところに「凹み」がついています。これを触ることによって、「あ、こっちに凹みがあるってことは反対側が開け口なんだなー」と認識することができるし、ジュースのパックには凹みが2つあるので「牛乳」と「ジュース」を見分けることができます(ついてないものもあるので完全じゃないけど)。
うちの母は牛乳パックを反対側から開けてしまう名人で、冷蔵庫を開けると両方を開けた後の牛乳パックをよく見かけたっけ(笑)
プリペイドカードの切れ込みも同じ理由です。どっちが挿入口側かわかるようになってます。ちなみにテレフォンカードは扇状、パスネットなど乗り物系は三角、買い物用カードは四角の切れ込みがついてて、種類も判別できるようになってるのは知ってました?
牛乳パックの凹みの存在を知らずに使っている人が沢山いるように、「さりげなさ」がポイントっていうのはこういうことなんです。
ところで、「ユニバーサルデザインの代表例」として必ず紹介されるものがあります。
誰もが知ってることなので偉そうに書く内容でもないんですが、それは、シャンプーのボトル。
一応説明すると、シャンプーの容器の横には必ずギザギザがついています。
シャンプーとリンス、触ることによってどっちのボトルなのか判別できるようについてるもので、残液目盛りじゃありません(笑)
目が不自由な方は「あ、こっちにギザギザがあるってことはシャンプーだな」と認識することができますし、私達も頭を洗うときは目をつぶることが多いから、触って判別できるのはすごく便利。
余談ですが、シャンプーボトルにギザギザをつけることはJIS規格で決まってるんですが、最近は「ギザギザがついてりゃいいんでしょ」的になってきて、見た目でシャンプーかリンスか区別しにくいものが出てきています。大きく「シャンプー」「リンス」と書いておくのもユニバーサルデザインなんですよね。
なんで突然ユニバーサルデザインの話を長々と書いてるかというと。
実はここからが本題なんです。
日曜、ちびまる子ちゃんを見てたんですね。
すると某エネルギー会社のCMが流れました。
「シャンプーボトルとコンディショナーボトルの会話」なんですが・・・・・まずは映像を見てください。
http://www.astomos.com/cm/introduce/tv_cm/cm_01.html
*あえてリンクを張らずにURLだけにしています。コピペしてください。
コンディショナーにギザギザがついてて、シャンプーのボトルにはギザギザがないんです。見た瞬間に「えっ?!」と声を出してしまいました。
もしかして、このセットを作った人、このCMをチェックされた企業の人全員、そして声をあてたポカスカジャンはユニバーサルデザインの存在を知らなかったのだろうか。
いやいや。そんなはずはない。
CMはいろんなところに気を使って制作するものです。例えば、歯磨き粉や洗剤のCMでは必ず汚れが残ります。全部きれいになると「誇大広告」になってしまうからです。
だから、そんな小学生でも知っているようなユニバーサルデザインの代表例を間違えるはずがない。何か企業の狙いがあるはず。
「シャンプーのギザギザはあくまでも日本のJIS規格であって、これは違う国という設定なのだ」
なるほど。その可能性はある。でも、日本語しゃべってるけどね(笑)
この企業のCMコンセプトを日曜日の夜からずっと考えています。
明日あたり問い合わせてみようかな。
**2007年10月20日追記::
どうしても気になって、メールで問い合わせてみました。
要約すると、こういう回答が返ってきました。
製作会社に確認したところ、ユニバーサルデザインだと知らずに作ってしまったようです。ガーン。本気でどういう設定なのか考えてたのに、まさかそういうことだとは・・・。