リアルな美大法人企画室長の日常を
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教育実習の思い出16
すんごい久しぶり・・・。
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さて、帰って明日使う素材でも作るべか。
でも、どうしても気になっていたのは特別学級のあの子のことでした。彼女にはどんな説明をすればいいんだろう。
あっ!考えてみれば、家にその答えを知ってそうな人がいるじゃん。
うちの母親。前にも書きましたが、養護学校で勤めてたんです。
夕食後、母に聞きました。
「これこれこういう子がいて、線さえ引いてくれないんだよ。こういう場合ってどうしたらいいの?」
彼女の答えはすぐに返ってきました。
「そういう場合は、点と点だけ描いて『ここを結んでごらん』ってやるのよ」
「・・・・でもそれじゃ、自分の意思で引いてないでしょ?自分の気持ちいい線を引くのが目的でもあるんだから」
「それが出来る子と出来ない子がいるの」
「えっ・・・」
「彼女にとって、点と点を結ぶことが今の限界なら、それでいいじゃない。それができないんだったら、うっすら線を描いてあげて、『この上をなぞってごらん』ってやる。もし点と点を結べたら、『よくできたねー』と最大に誉めてあげる」
「で、でもそれじゃ中学の美術教育として・・・」
「彼女が今必要なのは中学の美術教育じゃないの!」
半分泣きそうになりました・・。ここは我慢だ。
「・・色を塗らせるには?」
「パレットに絵の具を出して、画面にちょっと色をつけて『この部分はこの色に塗ってごらん』とやればいい」
「で、で、でも、寒色暖色の授業なんだよ?それじゃ塗り絵じゃん。自分が『さむい〜』と感じた色を自由に塗って欲しいんだけど・・・」
「『自由に』と言いながら、実は自由じゃないのが彼女達にとって足かせになるの。『自由に描かせたい』っていうのなら、彼女の好きな絵を描かせてあげればいいじゃない」
「い、いやいや、それじゃ授業がなりたたな・・・・」
そこで雷が落ちるようなショックで気がつきました。
特別学級で見た絵は、自由に自分の描きたい絵を描いたから、素敵な絵だったんだ。
もし、「このテーマで描きなさい。条件はこれです」と指導して描かせたら、あんな絵は描けない。まず筆が止まってしまうだろうし、興味が沸かないだろう。
でも・・・美大ならともかく、中学の美術で毎回「描きたいものを描きなさい」というわけにはいかない。それは授業じゃない。
でも・・・「自由に」といいながら自由に描かせていない今の授業形式だと、もっと面白い絵が描ける可能性をなくしてるのかもしれない・・・。
続く。