ゆめの印刷

FOR MUSABI

制作に必要なものをいろいろ印刷しようと思って、ふとSDカードの中身を覗いた。
「ゆめの印刷」というファイル名が目にとまった。
いい加減に作品タイトルを縮めていってできた事故みたいな詩情に笑いが零れた。
そのあっけなさやインクの色味をおもって、すこし意識を飛ばしてしまった。

黙々とずっと絵を描いていると、くちびるとくちびるにジッパーでもあるみたいになって、
口をきくのがおっくうになる。
でも話したいことがいっぱいあるよ。
家族は大事、恋人は大事、広告コピーも物語もそればかりだけれど、
僕は友人に話したいことばかりあふれていくよ。すべてのひとと友人でいれたらいいのに。

此処を自分の日記みたいにしてしまっているから、ほんとうになんでもかんでも書いてしまうよ。
小学校で誘われた交換日記はいつも僕がとめていた。
中学のときに書いていた絵日記はいつのまにかやめていた。
高校のときから始めた変な詩みたいなノートの日付はひとつき前にさかのぼる。

僕が中学のときから好きなゲーテの詩がある。
「我が友 読者よ きみなくば 我はそもなんぞ
感ずるところ みな ひとりごとに終わり、我が喜びも言葉を知らず。」

これを暗誦したら研究室にウワサが広まって「ゲーテの詩をすべて暗誦できる超能力者」みたいになっていたけど、僕が暗誦できるのはごく短いものだけだ。
もしかしたら勝手に手を加えてしまってるかもしれないし。

思うのだけど、言葉というのは相手ありきのものなんだ。
高校の恩師がいつか「もし世界にひとりきりだったら、お前は絶対に絵なんて描いてない」と言い放っていたことがあって、それをときどき思い出す。
僕はすぐに会えない友人がたくさんいるからこうして日記を書くのだろう。

今日また、すぐに会えない人がたくさんできてしまった。
どこかで会えたらいいのに。

大学卒業って、どんな気分なんですか。
僕はいつも卒業したくてたまらない。小学校も中学校も高校もいつも卒業したかった。
でももし大学の卒業までに自分が何者かになれるという確信をもてなかったら、
きっとおそろしくて「おめでとう」なんて言ってほしくないだろうなあと思うんです。
おめでとうと言ってもいいですか。
それは別れの言葉でもあるけど。


オトギ

投稿者:fantasy : 2013年03月19日 21:53

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コメント: ゆめの印刷

大学のときは、さっさと卒業したいと思わなかったな。こんな楽しいことはもう2、3年続けたいと思ったな。

とはいえ、親掛かりになっているわけにもいかんし、さっさと社会に飛び込んだよ。

モラトリアム、などという言葉が言われ始めたのは僕の世代からじゃないかな。実際、身の回りに20代後半の大学生がいたからな。

まあ、お腹いっぱいになるまで大学生を続けるより、社会に出てしまった方が楽しいことがたくさんあることも事実だな。

投稿者 音量子 : 2013年03月20日 21:39

音量子さん
大学はとても過ごしやすくて大好きです。
でも、僕はずっと卒業したくてたまらなかったんです。今も「はやく働きたい」とたびたび思います。
それは多分意地からくるものなんだと思いますね。
子供とか学生とか、そういう名札に守られることなく戦えるって、
それを証明したいんです。
学生という名札をつけているのはなんだか卑怯なことのような気がして。

投稿者 オトギ : 2013年03月24日 22:41

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