リアルなムサビの日常を
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濡れた子ども
FOR MUSABI
帰り道にポツポツと雨が頬に触れて、あまりの感動に駆け出したくなった。
春だ!
ひざしの柔らかさにも風の強さにも降り出した弱々しい甘い雨にも、胸が痛くなるほど感動する。
まだ19回しか春を経験していないんだから、それは当たり前のことだろうね。
ざわざわとしてうるさい。
いつまで経っても、雨が降ったとか風が吹いたとか雪が積もったとか、そんなことに感動して動けなくなっていたい。
モナリザもミロのヴィーナスもどうでもよかったころ、
空の美しさにみとれてどこにも帰れなくなった。
傘もさせずに空き地で立ち止まった。
一緒に歩いてた子に気をつかわせて濡れたまま帰らせてしまったこともある。
そのとき、僕の知っている雨は誰よりも素晴らしいものだと信じて疑わなかったし、
今でもそう思っている節がある。
だからこれはどこにもない国の雨の話なんだ。
オトギ