リアルなムサビの日常を
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3.11
FOR MUSABI
3月11日のことについて考えたり口に出したりするには、持ち物が少なすぎる。
「美術で何ができるか」なんて考える前に、僕の美術はあまりにも未熟だ。時間がほしい。
あの日は卒業旅行中止か決行かの連絡を待っていて、地震は旅行を中止にしちゃった悪いお知らせ程度にしかならなくて、
心配性の友人が「日本を出たい」「イタリアに帰る」とか言って電話してくるのをなだめたりしていた。
ようやくデザインやアートの出番がまわってくるようなときに、僕等はちょうど社会へでていく。
それはなんて巡り合わせなんだろう。
今生きているこの時間をいつか「平成時代」とか呼ばれるようになったとき、
そこにどんな言葉があしらわれるのかわかったものではないけれど、
すれ違う人々が「日本は平和だね」と言ってることをずっと忘れないでいようと思う。
(命の重さが平等だというなら日本はとっくの昔に平和なんか失ってる。)
きっと、デザインもアートも全然足りてない。
でも僕は表参道のコンビニで買ったおにぎりを食べたあと、
ラジオが知らせる14:46という数字に目をつむるしかなくて、
そのことに罪悪感を感じるわけでもない。
哀しみになりきれない透明な弱い感情がよぎるだけ。
早く出番がくればいいと思う。
きっと自分の無力さにひどくうちのめされるだろう。
哀しみはそのときのためにとっておく。
それでもつくることをやめないだろうという漠然とした希望がある。
オトギ