リアルなムサビの日常を
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未完の青春
FOR MUSABI
ふいに 今まで見てきた美しいものが一斉にフラッシュバックして、
身動きがとれなくなることがある。
それは放課後に見た紫の雲であったり、足が踏みつぶした霜の音であったり、
街を覆い尽くす厚い霧の壁であったりする。
鳩尾におもいのが一発めりこんで、髪のひとすじまでうっかり痺れてなんにもできない。
でもハッと我に返ると、そこにはゴシック体で描かれたラーメン屋の看板とか、
土にまぎれた虫の死体とか、明度の低い町並みが 醒めた夢のように続いていって、
ああ、そうかそんなもんか としらけていたんだ、そういえば。
振り返るとよみがえるのはそんな夢みたいに綺麗な情景ばかりで、そこでひとつにくくってしまうから僕の記憶はまるで幻みたいだ。
何度でも一度見たものに心射抜かれるからお手軽だけど、
あんまりにもそれが苦しいときはこうやって勝手に補完する。
オトギ