歴史の天使

FOR MUSABI


こんな晴れた肌寒い秋の日には、美術館の整理された壁を背景にまどろんでいたい。
そう思ったから美術館に行った。

ワタリウム美術館の「歴史の天使」を見た。

インターネットでその言葉の並びを見る度にぞくっとしていた。
この前の草間彌生さんの展示が、ちょっと薄っぺらく感じられて肩すかしをくらったから、
ワタリウム美術館を敬遠してたんだ。けど。
なんだか素敵な展示だった。こんなに「言葉」と響き合う展示を久しぶりに見た。
写真と重なり合うようにして散りばめられていた多木浩二さんの文章が美しくて、
羽根がはえたように展示場をふわふわふわふわ歩いちゃった。


美術館全体が作品のようにデザインされていることが珍しく心地よかった。

透明なフィルムに白で印刷された文章の向こうに見える都会の喧噪
真っ白な壁の上、真っ赤な額に縁取られた小さな写真の群れ
最上階に響き渡る雪の音

そこにいるだけで心地よかった

美術館のソファでうっとりと浮かんでくる文字を並べているとき、
僕の体は浮いているかのようにふわふわと落ち着きが無かった。


いい展示だなあと思った。

カタログは買わなかった。

オトギ

投稿者:fantasy : 2012年11月01日 22:03

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