煤けたランチ

FOR STUDENT


予備校時代、お昼時が嫌いだった。

空気が弛緩して、目の前のモチーフはちっとも美しく見えないし
紙の上の絵もまるで冴えないし、講師の先生たちもご飯中で相談もできず
まったくもって先の見えない、夏休みのランチ。
土日のメンバーの子たちとはそこまで馴染めずに
漫画の話題にもついていけず、ぼーっと青い空を見てた。

どうにかしないといけないのに、
息巻いても    加速することのできないもどかしさ。
もっと聞いてほしいことは、試してみたいことは 他にあるのに
という、逃げにも焦りにも怯えにも似た 動悸。


今にして思えば
新しいステージに放り込まれるたびに、
ワンクリックで自分の経験値がゼロにされてしまったような
心もとなさを感じていたんだろう。

そんなことはないんだ。

そんなことはないんだ。と気づかせてくれたのは、いつも自分の作品だった。
違うか。自分の作品を好きだと言ってくれる誰かだった。


あのときそうだったように、これからも 制作に立ち止まる時
誰も助けてなんてくれないだろう。
それでも、過去を振り返った時 感謝したいと思える人は、
これからもずっと、増えていくんだろう。

いっこうに軌道に乗らない作品群を見比べてたら
真っ黒に汚れた自分の右手を洗っていた日々を思いだして
そんなことを、書きたくなった。


オトギ

投稿者:fantasy : 2012年08月22日 21:06

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