憂うつはいつも

FOR WORLD


ちょっとせつないものが好きだ。


子どものころ、女の子の笑顔よりも、
泣きそうな顔やキッとこちらを睨んでいるような顔がすきで
そういうものばかり描いていた。

そんなものを描いていると「なにか悩みでもあるの?」と聞かれるけど
残念なほどそんなものはなくて

むしろ、何も悩みがないことがコンプレックスだった。

もしくは、そんな平穏さをいつも憂いていたのかもしれない。


物語やドラマに見る主人公は、きまって心のうちに「何か」かかえていて、
それを機転にしてあらゆるものごとが動いていく。
それがうらやましかった。


今思えば、台風の目の中にいたのか
あるいは、部屋の中でしずかに嵐の音を聞いていたのか


僕にはわからないけれど

でもあのときの さみしさのような いらだちのようなものが
古傷のようにずっと心には残っていて
耳鳴りのようにして僕にしのびよるときがある。


そんなとき、
体の中のどこかが痛むような うずくものが見たくなる。


ちょっとせつないものが好きだ。


オトギ

投稿者:fantasy : 2012年06月01日 23:40

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