冷静と情熱のあいだ

FOR WORLD


おいしい珈琲を一杯飲むために、自転車をこいだ。


肌寒い夕刻、コートや髪が風にひっぱられるのも構わず。

甘いケーキが食べたかったわけでも、
歩きたかったというわけでもない。

バケツの底にあいた穴みたいに
ポカンとだらしなく空いた午後の隙間を埋めるのに、
その思いつきはうってつけのような気がしたから。


途中、図書館で本を借りた
いつか見た 真っ赤な本と対になっている、真っ青な本。
埋め込むように鋭く刻まれた、ぎんいろの十字架が光ってる。
その装丁をいつの日か本屋で見て、いつか読もうと決めていたのを思い出した。


人通りの多い道で、自転車を漕ぐのはわずらわしい。
気まぐれに降りてみたら、前を行く学生に変な目で見られたりした。
自転車をおして歩いてみたら、本を読みながら歩いてる女子高生とすれ違ったので、
変な目で見たと思う。


知らない路地裏に慎重深く入っていく
珈琲がある、個人経営のお店だけを探す。


幸運なことに、珈琲専門店がすぐさま見つかった。
迷わずに入る。
平日の午後 すれ違いにお客さんもでていって
店内には僕と店主しかいない。
なんだか名前の長い甘い珈琲を頼んでみたら、
ワイングラスで出て来て一瞬かたまるも、
ノンアルコールで安心する。

本を開く。
クラシックが流れてる。


時間はもったいぶるように漂ってる。
僕は冷静にページをめくっている。
僕はぎこちない手つきでワイングラスをなでてみる。
時間はピンで押しつぶされたように静止している。


オトギ

投稿者:fantasy : 2011年12月07日 22:41

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コメント: 冷静と情熱のあいだ

オトギ様、こんばんは。

本を読むのが目的で珈琲店に入る、いいですね。

駅の前に、今や日本中にあるシアトル発祥のチェーン店があるので、

帰りによく寄ります。

週に3回くらい行くと、さすがにお店の人にも顔を覚えられてしまう。

たくさんあるメニューの中で、選ぶのはいつもラテかティーラテ。

泡立てたミルクの底に、くたびれた気分が沈んで行く。

知り合いによく逢うので聞くと、彼女は毎日本を読むためにこの店に来る、と言ってました。

何の本だか気になる。

投稿者 yukihaha : 2011年12月07日 23:29

喫茶店の顔見知りっていいですね〜!
僕もそろそろ、「いきつけのお店」をつくりたいなあ。

喫茶店で本を読むときは、「すてきな時間をすごしたい」という気持ちのほうが強い気がしますっ
読書することじたいが目的ではないんですよね。
だって、読書したいだけなら、家で寝転んで読む方が(僕は)楽で好きなんです。笑
喫茶店は、本を読むことを特別なことに変えてくれるからいいですね〜

ティーラテ!僕も好きです。受験期はこればかり飲んでましたよ〜
あのかおりが落ち着いてよかったんですよね。

投稿者 オトギ : 2011年12月08日 21:51

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