リアルなムサビの日常を
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「物語をきかせて」
FOR STUDENT
大事な絵本がある。
高校2年のときにつくった、てづくり絵本。
アクリル絵の具やビーズ 布を使ってつくった、
はじめての絵本。
その絵本が今日 てもとにかえってきた。
ずっと高校にあずけていて、いろんなひとに見てもらってたんだけどね
どうしても手元に置いておきたいと思って
先生と母に頼んで、かえしてもらったんだ。
この絵本はさ がんばってやるぞ と思ってつくったものだったからか
見てると なんとかするぞ って気持ちが、不思議とわいてくるんだよね
受験のときもそうだったよ。
ふと思い立って、予備校の先生に見てもらったら
とても大切に見てくださって 授業の見本にしたい と言っていただいて
その頃“受験のための作品づくり”にとても参っていたから、
救われたんだ。
自分がつくったものを見て、癒されてくれたり笑ってくれたりするんだって
これからもきっとそうだって
だから頑張るんだって
ちょっと自分が信じられるようになるんだ
そういう記憶をつくるならやっぱり 高校生のうちだったんだろうな
って今も思う
少なくとも、僕にとっては。
僕が過ごしてきた時間と今こなすべき数々の問題のためには。ね。
あのとき 何度も徹夜してものをつくってなかったら
きっと僕は、今年あった いくつものつらい夜を、とてもやり過ごせなかったろう。
この絵本を超えているだろうか
そう思って、絵の具の塗りたくられた画用紙をなでてみる
まだまだだ って笑われてる気がする
見てろよ と返してみる
もっと苦しんで、もっと楽しんで いいものつくろう
おがむように にらむように
本棚に大事な物語が またひとつ、増えまして
もうひとつ まだたくさん
何か君に語れるようなおもしろい物語を 目を閉じて探してみる。
オトギ