リアルなムサビの日常を
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息継ぎをする魚
FOR WORLD
息が詰まる。
そう思って発作的にバスに乗る。
行こうかと思っていた駅をわざと通り越し、
どんどん どんどん
とおくとおくまで、体を運んでもらう。
バスや電車の、無愛想な揺れに身を任せる。
二度と会うことも無い人の 隣りに腰掛け、できるだけ自分を殺すように押し黙る。
とりとめもなく移り変わって行く景色を ずっと、ながめている。
ただそれだけの動作 変化 振動。
そんな美しくもなんともない、くたびれた波においやられ
顔を出し
僕はやっと息を吐き出せる。
何ものからも無関係になったような錯覚を覚えて
ほっとする。
どこにでもいけるし
どこにもいけない。
今はそういう季節。
喫茶店の壁にからだを預けて、カノンを聴いたり
宮沢賢治の「注文の多い料理店」を読み流したりして
生きることをやり過ごす。
世界が眩しい。
うつくしいものも みにくいものも
望む望まざるにかかわらず 僕のもとに流れ込んでくる。
それでも、たやすく目をつむったりなんてしない。
君の目を見て、あきれるほど正直に言葉をつないでいく
それは、変わらない。
どこにもいけない
でもどこにでもいける。
僕は僕の足で
君は君の足で
いつの日か陸にあがる。
今はまだ息継ぎをする魚。
オトギ